難聴と補聴器について
補聴器は聴こえの悪さを補う機器です。難聴の治療器ではないため、市販品を誰でも買うことができます。ただし、聴こえの状態はお一人おひとりで大きく異なります。また、長く難聴の状態にあった方は脳が音の処理をうまくコントロールできないこともよくあります。そのため、高額な補聴器を購入しても雑音が大きくて聴きたい音や声をうまく聴き分けることができないケースが多くなっています。
耳鼻咽喉科では専門知識を備えた医師が補聴器に関する相談やアドバイスを行っています。ご希望があれば検査機器を用いて精密に調べて、効果が期待できる補聴器の作製も可能です。さらに、その際には使用感などをうかがいながら患者さんに合わせてきめ細かく補聴器の調整を行っています。
難聴と認知症との相関は数多くの研究で報告されています。聴こえが悪くなるとQOL(クオリティ・オブ・ライフ)が大きく下がりますし、事故などに遭うリスクも高くなってしまいます。聴こえが悪くなって、会話で聞き返すことが増えたり、テレビなどのボリュームが大きいと指摘されたり、病院などで名前を呼ばれても気付かないことがあったら、ご相談にいらしてください。
補聴器外来受診の流れ
Step1問診
聴こえにくさの症状が現れはじめた時期、症状の内容、お困りの点やお悩みの内容などについて詳しくうかがいます。
Step2事前診断と検査
聴こえにくさは、慢性中耳炎や耳垢などによって起こっていることもあります。そのため、内視鏡や顕微鏡などを用いて耳の中を精密に調べます。 疾患や耳垢の問題がなければ純音聴力検査を行って補聴器の適応について確認します。
適応があったら、言葉の聞き取りの検査である語音聴力検査を行います。これによって補聴器をつける耳を左右どちらかに決め、期待できる補聴効果もある程度の目安がわかります。また、装用後の効果鑑定にもこの結果が用いられます。
Step3ご予約
補聴器外来のご予約を行います。
Step4補聴器外来受診
医師と認定補聴器技能者が、お悩みやご希望をうかがいながら補聴器についてご説明し、機種選択を行っていただきます。ご希望の補聴器が決まったら患者さんに合わせた調整のフィッティングを行います。その上で丁寧な装用指導を行って補聴器を貸し出します。金額や聴こえ方の特徴などもしっかりお伝えしています。
Step5補聴器の点検・調整
貸し出した補聴器を最大3か月間お使いいただくことが可能です。補聴器外来を再受診します。使用した感想をうかがいながら、再調整や貸出器種の変更を行い、再度貸し出して使用感を確かめていただき、受診して再調整を繰り返します。最初は雑音が気になっても、慣れてくるとうまく必要な音だけ聞けるようになっていきますし、調整を行うことでより快適な聴こえに調整できます。
Step6補聴器の決定と調整
満足できる結果にどうしてもつながらない場合は補聴器を返却いただきます。満足のいく聴こえが実現できるようになったら補聴器を決定し、購入となります。
Step7フィッティング
聴こえの調整を行った補聴器をお渡しします。装着の練習、操作やクリーニング方法などについてのご指導を丁寧に行い、保管方法についてもしっかりお伝えします。
Step8アフターケア
使っていく中で聴こえに関して、あるいは装着感で気になることがありましたらいつでもご相談いただけます。そうした際にはきめ細かく微調整していきます。聴こえが改善されると音に対する感じ方が変わってくることもあります。補聴器は聴こえをサポートする道具で、少しずつ調整しながらご自分に合うものへと成長させて行ける機器です。調整が合ってきたら、定期的に補聴器の点検やクリーニングにいらしてください。
また、補聴器の寿命は5年とされています。ただししっかりメンテナンスを行うなどよっても寿命は変わります。使っていて違和感があったらお気軽にいらしてください。
補聴器の種類
BOX型補聴器、耳かけ型補聴器、耳穴型補聴器があります。BOX型補聴器は本体はスマートフォンより小さくやや厚みがありイヤホンがついているタイプで、音を強く出すことができます。耳かけ型補聴器は、アーチ型の本体を耳にかけて使用し、さまざまな大きさや形状があります。耳穴型補聴器は、オーダーメイドで耳穴にぴったりするよう作る補聴器で、目立ちにくいことが大きな特徴になっています。
補聴器相談
聞こえと補聴器に精通した補聴器認定技術者が患者様の補聴器ケアにあたっています。
補聴器を初めてお使いになる方には
- 専門医の診断
- 補聴器装用についてのガイダンス
- 一人ひとりの患者さんに合わせた3ヶ月間無料補聴器トライアル(貸し出し、調整、カウンセリング)
- 購入相談
すでに補聴器をお持ちの方には
補聴器の機能チェックや補聴状態の確認を行い、補聴器装用が継続できるように、専門家による調整・ケアを行います。
補聴器に慣れてこられた方には
聴こえの感覚は少しずつ磨かれていきますが、「早口の話が聴きづらい」「食事会など、周りがにぎやかな場所では会話が聞きとれない」方が多くおられます。この補聴器の限界を超えられるように一人ひとりに合ったトレーニングをご提案しています。どうぞご相談ください。