肩の痛みについて
肩は上腕骨と肩甲骨をつなぐ部分で、肩甲骨のくぼみである関節窩に上腕骨の丸い骨頭が組み合わさって肩関節を構成しています。ケン玉のお皿に乗ったボール、あるいはゴルフボールとティーのような関係だと考えるとわかりやすいと思います。肩関節の周囲は腱や筋肉がしっかり支え、それにより安定性を保っています。
この肩関節に炎症や損傷といったトラブルが起きると肩に痛みを生じます。肩の痛みを起こす疾患にはさまざまなものがありますが、代表的なものに四十肩・五十肩、腱板断裂・腱板損傷があります。
四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)
中年以降に発症が多い疾患です。肩関節周囲組織が加齢によって変性し、炎症を起こして発症します。特にはっきりとしたきっかけなく肩関節の痛みと運動制限が起こる疾患です。肩の強い痛み、動かした際の痛み、動かしにくさ、腕が上がらないなどの症状があります。症状の推移から肩関節周囲炎は急性期・慢性期・回復期の3つに大きく分けられます。
急性期
発症から2週間程度
痛みが強くなり、動く範囲が狭まっていきます。寝返りに伴う痛みが強く、夜よく眠れないほどの痛みを感じるかたもおられます。
慢性期
3か月~1年程度
痛みは少しずつ改善に向かいます。動く範囲が狭まる可動域制限は続き、日常生活やお仕事への支障が残ることがあります。
回復期
1年~数年程度
痛みはかなり軽減され、可動域も徐々に回復していきます。
まずは痛みの症状を和らげるために薬物療法、局所麻酔薬を神経の痛む場所に注射して痛みを解消する神経ブロック療法などを行い、関節の動きの問題を残さないために運動療法で可動域を回復させる治療を行います。肩の痛みや可動域制限が、肩関節そのものだけでなく、姿勢の悪さや、頚椎・胸椎の動きの悪さからきている場合もあります。痛みのある局所だけでなく、全身の動きをみながら肩関節の運動療法を行うことで、より早期に痛みや可動域制限の問題を解決することが可能になります。
腱板断裂・腱板損傷について
肩甲骨と上腕骨は、棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋という4つの筋肉がつないで安定させ、スムーズな動作を実現しています。この4つの筋肉が上腕骨につながる付着部の総称が腱板です。腱板断裂・腱板損傷は、上腕骨頭に付着している腱板が骨頭から剥がれてしまった状態です。腱板の中でも棘上筋は骨の間に挟まれているため軽微な外傷で損傷することがあります。また腱板自体も筋肉ですから、加齢などによって筋力が衰えて腱板断裂・腱板損傷を超しやすくなるため、中年以降の発症が多くなっています。
特定の動作によって肩に痛みが起こる症状が多く現れ、夜間に痛みが現れやすい傾向があります。四十肩・五十肩との違いは、肩の動きに関する可動域制限があまりなく、制限があっても他の人に手を挙げてもらうことができるという点です。また、手を挙げた時にザラっとした音がする、手を挙げ続けることができないなどの症状が現れることもあります。
問診や診察で状態を確かめ、エコーやMRIなどの画像検査で状態を確認して診断します。
肩こりについて
肩こりは医療機関で治療を受けることで改善することができます。慢性的に症状を抱えている方が多く、1回の治療や投薬で解決するのは難しいかもしれません。しかし、肩のこりや動きの悪さが、肩そのものだけでなく、姿勢の悪さや、頚椎・胸椎の動きの悪さからきている場合もたくさんあります。痛みのある局所だけでなく、全身の動きを徒手治療で整えながら運動療法を行うことで、より早期に痛みや動きの問題を解決することが可能になります。
また、頚椎疾患、頭蓋内疾患、高血圧症、眼疾患、耳鼻咽喉疾患、肩関節疾患などが原因で肩こりが起こっている場合もあります。慢性的でひどい肩こりはQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を大きく低下させてしまいます。日常的によくある不調とあきらめず、ご相談にいらしてください。
症状
肩を中心に、首から背中までの範囲に痛みやこり、こわばり、張りなどを生じます。頭痛やめまい、耳鳴り、吐き気などを起こすこともあります。
原因
筋肉は同じ姿勢を続けると緊張が続きます。猫背やデスクワークなどで日常的に筋肉の緊張が続くと肩こりを起こしやすくなります。また、なで肩の方は肩こりにやりやすい傾向があります。運動不足やストレス、肩にかけるカバン、冷えなども肩こりの原因になります。
肩こりを起こす筋肉はいろいろありますが、中心になるのは僧帽筋です。僧帽筋は首の後ろから肩、そして背中まで広がる大きな筋肉で、物を持ち上げる・引き寄せるなど日常的な動作に使われます。
診断
問診で症状についてくわしくうかがい、診察で筋緊張や圧痛、肩関節可動域を確認します。必要に応じて頚椎の病気や高血圧など疾患が関わっていないかなども調べていきます。画像検査や血圧測定、心電図なども行う場合があります。
当院で行う治療内容
原因となる疾患があればまずその治療を行います。痛みの症状を和らげるために薬物療法、局所麻酔薬を神経の痛む場所に注射して痛みを解消する神経ブロック療法、筋膜の癒着をはがすハイドロリリース、筋膜リリースなどを行い、運動療法で可動域を回復させる治療を行います。首や肩の痛みが、痛みのある局所の問題だけでなく、姿勢の悪さや、頚椎・胸椎の動きの悪さからきている場合もあります。全身の動きを整えながら運動療法を行うことで、より早期に痛みや可動域制限の問題を解決することが可能になります。
スマホ首
首を横から見た場合、正常な状態では首の中心が前に反った緩やかなカーブを描いていますが、スマホ首ではこのカーブがまっすぐに近い状態になっています。そのため、ストレートネックと呼ばれることもあります。
同じ姿勢を習慣的に取り続ける、座った時の姿勢の悪さ、長時間モニター画面を上から見下ろすように見ているなどにより起こります。特にスマートフォンの長時間使用によって発症するケースが多く、最近ではスマホ首と呼ばれています。
頚椎は7つの骨が重なってできていますが、この骨のならび(前弯)が30°以下になるとストレートネックの症状を起こしやすくなります。頭部はとても重いため、重心が前になると頭部の重みを支える筋肉により大きな負担がかかり続けることになり、慢性的な肩こり・頭痛・吐き気・めまいなどの症状を起こします。脳が十分に休息をとれなくなるため、集中力の低下や睡眠障害、抑うつ状態などを起こすこともあります。
首は脳と全身をつなぐ大切な部分であり、大切な太い血管や神経などが通っています。スマホ首の症状を感じておられる方は、放置せず一度当院にご相談ください。
治療には症状の緩和だけでなく、姿勢の改善が必要となります。痛みの症状が強い方は薬物療法、局所麻酔薬を神経の痛む場所に注射して痛みを解消する神経ブロック療法、筋膜の癒着をはがすハイドロリリース、筋膜リリースなどを行い、運動療法で可動域を回復させる治療を行います。首や肩の痛みが、姿勢の悪さや、頚椎・胸椎・腰椎の動きの悪さからきている場合は、全身の動きを整えながら運動療法を行うことで、より早期に痛みや可動域制限の問題を解決することができます。